りぼんの読書ノート

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ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行(下川裕治)

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「62歳のバックパッカー」を自称する著者が出かけた旅は、ユーラシア大陸最南端駅のシンガポールから、最北端駅のムルマンスクを目指す18000kmを超える鉄道旅。かつての『ユーラシア横断2万キロ 』には距離的にはわずかに及びませんが、内容は濃いですね。しかもこの旅には、かつて中国からロシアへと茶葉を運んだ交易路をたどるというテーマもあったのです。
 

 

シンガポールとマレーシアでは不便な赤字鉄道を優遇するブミプトラ政策に思いを馳せ、タイでは相変わらず不正確で融通の利かない鉄道運行に予定を狂わされ、ミャンマーでは乱気流に翻弄される飛行機のように揺れる列車に悩まされます。このあたりはまだバックパッカー旅の醍醐味なのでしょうが、ダニは困ります。 

 

ミャンマーと中国の国境は列車で越えられないため、一旦帰国。中国でも国境近くを走る普通列車での硬座席や硬臥席は辛そうですが、武漢から先の中国新幹線はやはり味気ない。モンゴルでは連結されて走る国際列車と国内列車の運賃差に驚き、ロシアのシベリア鉄道ではひたすら単調な食事と風景に耐える日々。湖北省の資料館で写真を見た、ロシアの茶葉集積場の建物跡にまでたどり着いた場面は感動的です。 

 

どこに行くのも便利というのは、各国の表玄関から入る旅行だけのことなのですね。裏玄関を通る旅は、まだまだ不便で時間もかかり手続きも大変だということが、よくわかります。やはり、世界はまだまだ広いですね。こういう旅はちょっと無理ですが。 

 

2019/8