りぼんの読書ノート

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復活(トルストイ)

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「カチューシャかわいや別れのつらさ♪」で有名な、トルストイ晩年の小説です。

ストーリーは単純明快。人生への熱意を失いつつあった若い貴族ネフリュードフが陪審員として出廷した裁判において殺人の罪で被告となっていたのは、かつて彼が弄んで棄てた下女のカチューシャでした。彼女は、彼の子どもを産んで病死させた後に、娼婦に身を落としていたのです。

無実であったものの手違いでシベリア徒刑を宣告されたカチューシャと再会して、罪の意識に目覚めたネフリュードフは、彼女の更正に人生を捧げる決意のもとに恩赦を求めて奔走します。しかし自由を得たカチューシャが選んだ新しい人生は、男の贖罪による救済ではなく、同志としての男とともに闘う道でした・・。

斬新なストーリーですが、本書を「偉大な小説」としているのは、それだけではありません。カチューシャの救済という個人的な贖罪から始まった主人公の良心は19世紀後半のロシアの裁判制度の不公正さ、地主制度と農民の窮状、監獄制度の不合理性や囚人虐待という社会全体の問題に眼を向けさせていきます。

非暴力主義者であったトルストイが、人間への絶対的な許しを「救済」としたのは、時代的な制約でしょうが、本書で綴られる内容は「革命思想の萌芽」と言えるほど過激なのです。シベリアの監獄制度を描写した場面などは、さらに時代を超えてソルジェニーツインの『収容所列島』を思わせるほどです。

2012/2