りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

チェルノブイリから来た少年(オレスト・ステルマック)

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チェルノブイリ」という地名を含む重いタイトルなのに、軽い内容の作品でした。かなりご都合主義のエンタメ小説だったのです。

30代の美人ニューヨーカーのナディア・テスラは、ウクライナからの移民2世の元証券アナリストウクライナパルチザンの戦士だったという、今は亡き彼女の父親の過去を知るという人物から明かされた「秘密」が、彼女をウクライナへと旅立させます。莫大な富を生む極秘情報を握っているという叔父のダミアンが生きていて、彼女に会いたがっているというのです。

その一方で、情報を嗅ぎつけたウクライナ・コミュニティを牛耳るビクターと、彼と敵対するミーシャが、彼女を追いかけます。キエフ・マフィアのボス、キリロを含めた「3悪人」に追われたナディアは、チェルノブイリの闇の中に分け入っていくのですが・・。

間一髪で危機をすり抜けたり、なぜか絶妙のタイミングで白馬の騎士が登場したりは、まだマシな部分。シベリアを含むロシア全土を横断して、点在する少数民族のキーマンに助けられながら、最後は凍てつくベーリング海峡を徒歩で渡るとなると、まるで「007」シリーズのよう。ヒロインを含めて、登場人物がワルばかりなのは、気に入りましたが。

それでも、チェルノブイリの立ち入り禁止区域「ゾーン」の中でさまざまな活動が行われているという情報は、(事実であれば)新鮮でした。確かに「石棺」の維持補修や、様々な研究調査のための要員配置は必要なのでしょう。ひょっとすると、本書のように、「表社会」で生きられない者の「潜伏場所」になっていることもあるのかもしれません。

2015/6