りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ウォークン・フュアリーズ(リチャード・モーガン)

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27世紀。精神はデジタル化されてメモリースタックとなり、異なる肉体への移し変えが可能になっています。肉体的な死が「永遠の死」を意味しない時代。人類は宇宙開拓を始めており、それぞれ自治権を持つ殖民惑星を統治するために中央政府はエンヴォイと呼ばれる特命外交部隊を有しています。徳川幕府が各藩を監視する「お庭番」に最強戦闘部隊をプラスしたようなものでしょうか。

元エンヴォイ隊員タケシ・コヴァッチは、生まれ故郷のハーランズ・ワールドで過去の清算をしようとしているのですが、謎の女シルヴィを助けたことから、「ヤクザ」に追われることになってしまいます。さらに、殖民星の支配者であるハーラン一族は、若い頃のコヴァッチ自身を肉体化させて送り込んでくるのです。

シルヴィの内部には300年前の伝説の革命家ナディアの人格が潜んでいるようで、細々と生き延びていた革命派は彼女を救世主のように扱うのですが、一度は完全に死んだナディアの精神が生き返ることなど不可能です。果たしてシルヴィの正体は・・。さらに、この星には秘密裏に現役エンヴォイ・チームの調査も入っていたのですが、その目的は何だったのか。

その背景には驚愕の事実が潜んでいたのですが、前巻ブロークンエンジェルで痕跡を見せた、高度な文明を築き上げながらどこかに消え去ってしまった火星人の存在が、本巻でもカギとなります。

シリーズ3作目ともなると衝撃的なガジェットも色褪せてきます。ストーリーの面白さが問われるわけですが、「眩暈がするほどダイナミックで衝撃的な物語」との解説も決してオーバーではありません。楽しめる作品に仕上がっています。

2010/12