りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

老人と宇宙(そら)4 ゾーイの物語(ジョン・スコルジー)

イメージ 1

第3作最後の星戦でシリーズは完結しています。シリーズの主人公であったジョンとジェーンの養女で、重要な役割を果たした少女ゾーイの視点から『最後の聖戦』の物語を描写することによって、作品の奥行きを深めたサイドストーリーにあたる作品です。

この種の作品としてはエンダーのゲームに対するエンダーズ・シャドウが有名ですが、著者も触れているように「ダラダラとした書き直し」を避けるには、新たな視点だけでは不十分。本編の背後に潜んでいた新たな物語が必要なのですが、本書はどうやってこの問題をクリアしたのでしょうか・・。

ひとつの宇宙種族から「女神」として崇められている「運命の子」ゾーイは、一方でごく普通の十代の少女にすぎません。本書の前半は、養父母とともに新たなコロニーの開拓に参加したゾーイが、友情や淡い恋を育みながら、あまりにも重すぎる運命と折り合いをつけていく成長物語になっています。大きな出来事は起きないのですが、ここが重要ですね。読者には、ゾーイにしっかり感情移入してもらわないといけませんから。^^

このシリーズのテーマは「なぜ人類が宇宙で孤立しているのか?」に尽きるのですが、人類による「コロニー連合」によって囮とされた、ゾーイや両親たちの住む殖民惑星を救うため、ゾーイは旅立ちます。はじめは父母や友人ら身近な人々だけの救済を望んでいた少女が、責任の重さに気づき、押し潰されそうになりながら、それでも毅然として心情を訴え、「キリンと蜘蛛を足して2で割った姿(想像できません)」をしているオービン族から共感を得ていくあたりは、男の子の読者なら「萌える」ところでしょう。^^

ゾーイが象徴的な「女神」から脱皮して「女神」にふさわしい役割を果たすことが、実は普通の十代の少女としての自分を取り戻すことだった・・という逆説的な物語、なかなか楽しかったですよ。

2011/3


P.S.
週末、ボランティアの青年たちが新浦安の街路に積っていた液状化の泥を片づけてくれていました。感謝!