りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

天冥の標1.メニー・メニー・シープ(小川一水)

イメージ 1

かつて六つの勢力があった。 それらは「医師団(リエゾンドクター)」「宇宙軍(リカバラー)」「恋人(プロステテュート)」「亡霊(ダダー)」「石工(メイスン)」「議会(スカウト)」からなり、「救世群(プラクティス)」に抗した・・。
日本を代表するSF作家である著者が、SFマガジン編集長との「10巻くらいで、できること全部やっちゃってください」との大胆な依頼に応えて書き綴っている、超大作の序章です。今日現在で8巻まで出版されています。

人類による殖民星ハーブC(通称メニー・メニー・シープ)は、300年前の殖民時のトラブルによって他の殖民星から孤立したまま、過去の超技術が失われつつある世界。ロボット兵パイオニアと、兵士に仕立て上げた原住知的生物メイスンという武力を占有して権力を掌握しているのが、臨時総督ユレイン三世。しかし、彼が命じた過酷な配電制限は、革命を招こうとしています。しかも配電制限の理由は、権力者たちが準備を進める惑星脱出だというのですから。

破滅への予兆は、権力の濫用だけではありません。新天地を求めて船出した体質改造人アンチヨークス(海の一統)のアクリラはとてつもない規模で行われている隠蔽作業を目撃し、アクリラの幼馴染の医師カドムは謎の疫病を発生させた不思議な生き物イサリを発見します。一方で、ラゴスの率いる芸術家的アンドロイド集団ラバーズもまた、政府下の不満に共鳴。

そして起きた革命によって権力者が逮捕されたときに、真の危機が訪れます。ユレイン三世による電力制限は、イサリと同類と見られるフェリシアンなる怪物種族による類攻撃を防ぐための措置であり、権力機構の崩壊によって防御が破れてしまったのですから・・。革命を率いてきた若き助成議員エランカは、指揮権を得たアクリラは、行方を見せないラゴスは、カドムやイサリは、そして植民者たちの社会はどうなってしまうのでしょうか。

本書で語られた歴史と伝承には、真実と欺瞞が混淆しているようです。このシリーズは第2巻から当分の間、過去に遡ってこの世界の成り立ちを解き明かしていき、最後になって本書の続編が語られていく模様。それまで本書の内容と登場人物を覚えていればよいのですが・・。とにかく謎が多いのです。

2014/8