本書は、それぞれある人物になりきって1人称で書かれた短編小説集。シニカルなフレーズのようなタイトルと、人類初の女性宇宙飛行士テレシコワの笑顔の表紙を見ると、まるでジョーク集のようにも見えるのですが、かなりシリアスな作品が並びます。全米図書賞の短編賞受賞作とのこと。
「ゼロメートル・ダイビングチーム」
語り手は、チェルノブイリ事故調査を担当する原子力エネルギー局の主任技師。弟たちが犠牲になった大事故の原因は、公式発表された一部職員の操作ミスではなく、システムと設計の問題であると見抜くのですが・・。
語り手は、チェルノブイリ事故調査を担当する原子力エネルギー局の主任技師。弟たちが犠牲になった大事故の原因は、公式発表された一部職員の操作ミスではなく、システムと設計の問題であると見抜くのですが・・。
「リツヤ湾のレジャーボート・クルージング」
語り手は、子供のころに津波で弟を亡くした男性。結婚して長男を得、もう一人子供を欲しいという妻の希望を理解しながら、独断でパイプカット手術の日程を決めてしまうのは、深いトラウマから逃れられないせいなのでしょう。
語り手は、子供のころに津波で弟を亡くした男性。結婚して長男を得、もう一人子供を欲しいという妻の希望を理解しながら、独断でパイプカット手術の日程を決めてしまうのは、深いトラウマから逃れられないせいなのでしょう。
「最初のオーストラリア中南部探検隊」
語り手は、19世紀のオーストラリア中南部探検隊の指揮者。大陸中央部に巨大湖があると信じてボートを運ぶくだりは滑稽ですが、遭難してしまっては笑ってばかりもいられません。犬の肉球が消滅するという、灼熱砂漠の叙述は壮絶です。
語り手は、19世紀のオーストラリア中南部探検隊の指揮者。大陸中央部に巨大湖があると信じてボートを運ぶくだりは滑稽ですが、遭難してしまっては笑ってばかりもいられません。犬の肉球が消滅するという、灼熱砂漠の叙述は壮絶です。
「エロス7」
語り手は、世界初の女性宇宙飛行士となったソ連のテレシコワ。完璧な優等生を演じて選抜された彼女が、ミッションを無視して宇宙体験を満喫していたというのは愉快な設定。彼女がランデブー相手のヴァレリーに恋していたのかどうかはわかりませんが。
語り手は、世界初の女性宇宙飛行士となったソ連のテレシコワ。完璧な優等生を演じて選抜された彼女が、ミッションを無視して宇宙体験を満喫していたというのは愉快な設定。彼女がランデブー相手のヴァレリーに恋していたのかどうかはわかりませんが。
2017/3