りぼんの読書ノート

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14歳のX計画(ジム・シェパード)

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聞いたことがある名前と思ったら、村上春樹選のアンソロジー恋しくてに収録されている「恋と水素」の著者でした。「スクールシューティング」をテーマとした本書は、「コロンバイン高校銃乱射事件」の記憶もまだ新しい2004年に出版されています。

語り手は14歳のエドウィン少年。8年生(中学2年生)のエドウィンは、絵が上手なようですが、友人や教師とはうまくつきあえていません。周囲の人たちが自分を無視した回数を「X型の骨の記号」でノートに記している毎日。唯一の有人であるフレイクは自尊心の高さから孤立していて、自分を馬鹿にした相手を挑発しては逆に叩きのめされてばかり。エドウィンを心配する母親の思いも伝わりません。

この2人が「スクールシューティング」を決意した特別なきっかけなどは、なかったようです。フレイクが父親の銃を勝手に持ち出したことが、それを可能にしたわけですが、ごく普通に「スクールシューティング」という結論に至ってしまったことが、病巣の深さを物語っているのでしょう。

訳者の小竹由美子氏が、「この先、エドウィンがなんとかこの絶望からはいあがって、自分がドジな負け犬で終わってしまったことをよかったと思える日が来るよう、祈らずにはいられない」と書いていますが、全く同感です。

2017/3