りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

後妻業(黒川博行)

イメージ 1

高齢の資産家の後妻となって遺産を相続することを「業」とするには、相手の男性が早く亡くなってくれないといけません。結婚相談所の所長・柏木とグルになって「後妻業」を繰り返す小夜子の仕事には、夫の死期を早めることも含まれていたのです。

物語の前半では、脳梗塞で倒れ、病院で息を引き取った91歳の老人の遺産を相続しようとする小夜子らの「手口」が描かれます。籍を入れずに内縁の妻のままでも「公正証書遺言書」さえ取得しておけば法律上は最強であることや、保険金が絡まなければ警察は動かないとか、他の遺族の法定相続分をごまかすための手口などが紹介されるのですが、小夜子らの「犯罪」はこのレベルではありませんでした。彼女は9人もの「前夫」がいたのです。

物語の後半では、父の遺産を取り返そうとする姉妹が弁護士に相談したことから、小夜子らの犯罪が暴かれていく過程が描かれます。弁護士から調査を依頼された元刑事の興信所職員・本多が、金の臭いを嗅ぎつけて、彼女らの過去の悪事を探っていくのです。もちろん正義のためではなく、狙いは強請ること。かくして、小夜子・柏木と本多の間で、金を巡る裏の闘いが起こるのですが・・。

高齢化が進むとともに、この種の犯罪は増えていきそうですね。本書と似たような事件も、実際に起きています。2016年に、大竹しのぶ(小夜子)、豊川悦史(柏木)、永瀬正敏(本多)らの主演で映画化されました。本書の小夜子はもっと年上のようですが、大竹しのぶはまさに適役だと思います。完全に彼女のイメージを想像しながら読んでしまいました。

2017/7