スペインのペドロ・アルモドバル監督が「ジュリエッタ」のタイトルで映画化した、3篇の連作短編を中心とする短編小説集です。原作『Runaway』は『イラクサ』と『林檎の木の下で』の間の2004年に出版されています。
「チャンス」
臨時職員としてラテン語を教えている大学院生のジュリエットは、たまたま乗り合わせた列車の事故がきっかけで漁師のエリックと出会います。ふと彼のもとを訪ねてみたジュリエットは、エリックの妻が亡くなったという知らせを聞くのです。
臨時職員としてラテン語を教えている大学院生のジュリエットは、たまたま乗り合わせた列車の事故がきっかけで漁師のエリックと出会います。ふと彼のもとを訪ねてみたジュリエットは、エリックの妻が亡くなったという知らせを聞くのです。
「すぐに」
エリックと同棲を始めていたジュリエットは、1歳の娘・ペネロペを連れて帰郷します。教職を辞めた父と病床に就いている母が、家事を手伝ってくれる若い娘に頼り切っているのを見て、もはやここは自分の家ではないという違和感を抱いて、エリックのもとに戻るのでした。
エリックと同棲を始めていたジュリエットは、1歳の娘・ペネロペを連れて帰郷します。教職を辞めた父と病床に就いている母が、家事を手伝ってくれる若い娘に頼り切っているのを見て、もはやここは自分の家ではないという違和感を抱いて、エリックのもとに戻るのでした。
「沈黙」
その後のジュリエットの半生が概括されます。エリックが海に出て遭難した後、人気キャスターとなったものの、一人娘のペネロペは宗教施設に入所して連絡もとれないまま。母を看取ることもなく、父とも理解しあえなかったジュリエットは、ひとりで老後を迎えようとしています。彼女の半生は豊かでしたが、だからこそ家族との距離感の難しさが浮かび上がってくるのです。
その後のジュリエットの半生が概括されます。エリックが海に出て遭難した後、人気キャスターとなったものの、一人娘のペネロペは宗教施設に入所して連絡もとれないまま。母を看取ることもなく、父とも理解しあえなかったジュリエットは、ひとりで老後を迎えようとしています。彼女の半生は豊かでしたが、だからこそ家族との距離感の難しさが浮かび上がってくるのです。
「情熱」
結婚を目前にした娘が怪我をして、医師である婚約者の兄によって病院に運ばれますが、彼は彼女を不思議なドライブに連れ出します。その時の一瞬の判断が、人生を変えることになるとは思わなかったのでしょう。
結婚を目前にした娘が怪我をして、医師である婚約者の兄によって病院に運ばれますが、彼は彼女を不思議なドライブに連れ出します。その時の一瞬の判断が、人生を変えることになるとは思わなかったのでしょう。
「罪」
出生の秘密に悩む少女のもとに、彼女の実母とおぼしき女性が登場してきます。少女に隠されていた家族の秘密とは何だったのか。次の「トリック」とともに、ミステリ的な要素を多く含む作品になっています。
出生の秘密に悩む少女のもとに、彼女の実母とおぼしき女性が登場してきます。少女に隠されていた家族の秘密とは何だったのか。次の「トリック」とともに、ミステリ的な要素を多く含む作品になっています。
「トリック」
年に一度のシェイクスピア演劇祭のときに出会った移民男性と約束した翌年の再会は、思いがけない結果に終わります。生涯を独身ですごした女性は数十年後になって、その晩起こったことの真実を知るのです。ミステリでよくあるトリックが自分の人生に仕掛けられていたとは・・。
年に一度のシェイクスピア演劇祭のときに出会った移民男性と約束した翌年の再会は、思いがけない結果に終わります。生涯を独身ですごした女性は数十年後になって、その晩起こったことの真実を知るのです。ミステリでよくあるトリックが自分の人生に仕掛けられていたとは・・。
あれが人生を変えてしまうことになる瞬間だったとは、後になってわかるものなのでしょう。しかし本書を貫いている視点は、決して後悔ではないのです。2013年に絶筆を宣言した著者ですが、作品リストを見るとまだまだ未翻訳の短編集がありますね。今後の邦訳にも期待しましょう。
2017/7