前作の『ラビリンス』は、南仏を舞台に13世紀の少女と現代の女性が時を越えて共闘し「古代の秘密」に決着をつける物語でしたが、本書も同じ趣向です。
1891年。17歳のレオニーは兄のアナトールとともに、フランス南西部のレンヌ・レ・バンに住む伯母イゾルデの屋敷に招かれますが、兄と伯母に恨みを持つ殺人鬼が2人を追いかけます。一方でレオニーは、敷地内の霊廟には古代西ゴート族の悪魔信仰に連なる遺構があって、タロットと謎の音楽によって不思議な出来事が起きたという記録を発見します。
2007年。作家デビューをめざすメレディスは、ドビュッシーに関わる取材と自分の出自を探るため、レンヌ・レ・バンを訪れます。母親の形見のなかに、そこで撮影されたと思しき写真と、「霊廟1891年」と記された楽譜があったからなのですが、当時そこで「悪魔」が現れて人々を惨殺したとの伝説を聞かされます。
過去と現代が交錯する中でいくつもの謎が進行していくゴシック仕立ての小説なのですが、前作と同様に「現代」の部分が迫力を欠いてしまいます。それと、ドビュッシーとの関連がもっと欲しかったかな。彼の音楽を「悪魔の音楽」とは言いきれないのでしょうけどね。
2009/7