りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

犬たち(レベッカ・ブラウン)

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かつて読みかけてあまりのグロさに序盤で挫折した、多和田葉子『変身のためのオピウム』を思い出しました。想像上のものであっても、身体的な暴力を連想させるエロティシズムにはついていけません。それでもこの本を最期まで読んだのは、訳者が柴田元幸さんだったからでしょうか。

一人暮らしの女性の部屋に、美しく威厳のある雌犬が唐突に現れます。孤独だった女性はその犬の出現を受け入れるのですが、雌犬は子を産んで、犬たちは増殖し、やがて女性を支配し、服従させるようになっていきます。

通常、人間に支配され服従する犬との関係が、ここでは逆転していくんですね。それだけではありません。犬たちは、女性に暴力を振るい、女性を犯し、さらには貪り食い、その存在を否定していきます。はじめは部屋の中だけに棲息していた犬たちは、外出先にまでついてくるようになり、女性の生活は四六時中、犬たちに支配されるのです。もちろん、犬たちの存在は他人には見えませんし、貪り食われた女性も常に再生する。

では、この「犬たち」とは何者なのか。色んな解釈ができるのでしょうが、この種の本は生理的に受け付けませんので、読み終えるのがやっと。考えを巡らせることもできません。

2009/7