りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

尼僧とキューピッドの弓(多和田葉子)

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多和田さんの小説は苦手です。『変身のためのオピウム』を読みかけて、あまりの気持ち悪さに途中で放棄して以来ですが、「いつになくストーリーラインが明確で読みやすい」との書評に騙されてしまいました(笑)。

本書は、作者の分身とおぼしきドイツ在住の日本人作家が、ドイツの小さな町の尼僧修道院に取材に行く物語。そこは通常のイメージとは異なり、夫と死別・離婚した女性たちが、第二の人生をおくる生々しいコミュニティーでした。尼僧たちの間には、友情も、反発も、嫉妬も、希望もあり、「生=性」の匂いすら感じられるのです。

とはいえ、千年の歴史を持ち、信仰を共通理念とする修道院は、単なる「女性のホーム」ではありません。ただ、そこに集う中高年の女性たちは、決して「枯れてはいない」のです。なんといっても、尼僧院長の不在の理由が「駆け落ち」だというのですから。^^

第2部は、「弓道」の先生と駆け落ちした尼僧院長による一人称の物語。これはもう、あまりに情熱的な・・。アーチェリーではなく「弓道」というところがポイントなのでしょう。東洋的な「弓道」と尼僧修道院の「禁欲」には共通点を感じますが、それが一転して恋に!

確かにこの本では、気持ち悪くはならなかったのですが、読みにくい作家であることには間違いありません。苦手だな、やっぱり。

2011/2