りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

元気なぼくらの元気なおもちゃ(ウィル・セルフ)

イメージ 1

奇想コレクションには一癖二癖ある作家が並んでいるのですが、この作家のブットビぶりには「別格」の感があります。なんせ、12歳でドラッグに手を出し、コカイン漬けになりながらもオックスフォード哲学科を卒業。25歳ではアル中とヤク中で治療センター送りになり、更正して作家デビューというのですから。その経歴は作品にも反映されています。ドラッグや幻覚や分裂症的な感覚が頻繁に登場して、通常感覚では理解困難。まぁ「奇才」なのでしょうけど・・。

「リッツ・ホテルよりでっかいクラック」
古家を修繕しようとしてクラックの鉱脈を掘り当てたダニーは、弟のテンペを売人に仕立てて麻薬ビジネスに参入するのですが、テンペはジャンキーになってしまいます。麻薬が一時的にもたらす万能感が、現実となることはないのですが・・。

「虫の園」
壁から湧き出たシミの群れが文章を形作っている!虫と意思疎通をして取引した男が虫に依頼したこととは・・。妄想的なホラーですけど、身体が痒くなります。^^;

「ヨーロッパに捧げる物語」
イギリス人夫婦の息子が口走るのは難しいドイツ語の断片ばかり。一方、遠く離れたドイツでは、銀行の部長の様子がおかしくなっています。思わせぶりなタイトルです。

「やっぱりデイヴ」
カウンセラーのもとを辞去してパブに向かうと、いたるところにデイヴがいるんです。分裂病的な妄想なのかしら?

「愛情と共感」
もはや大人は性的関心を喪失し、遺伝子操作で生まれた「大きな子ども」エモートを連れまわしています、エモートとは、肥大化した子どもっぽい自尊心のようですが・・。

「元気なぼくらの元気なおもちゃ」
北からロンドンに変える途中の、アル中でジャンキーの精神科医が、ヒッチハイカーを拾います。精神科医は、自分のことは語らずに相手の人生を丸裸になるまで聞き出して満足するのですが、ヒッチハイカーの話は全部ウソなのかも・・。これって何?

ボルボ760ターボの設計上の欠陥について」
前作と同じ主人公が、妻にバレないように浮気するため苦心する話。支離滅裂なんだけど色んな解釈ができそうです。結局はジャンキーの思考なのかしら?

「ザ・ノンス・プライズ」
冒頭の作品と同じ主人公ダニーはいまや完全にジャンキーに変わり果て、昔の恨みから幼児レイプ殺人犯に仕立てられて刑務所入り。ダニーは作家になる訓練を始めます。経験に基づく物語なんでしょうか。でも、性倒錯犯罪者たちが綴る小説はサイテーです。

まともな小説がお好きな方は、本書を読んではいけません。^^;

2011/2