りぼんの読書ノート

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RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧(荻原規子)

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シリーズ2作めです。紀伊山地の奥深くの玉倉神社に育った泉水子は、引っ込み思案で何事にも自信を持てず、内気で弱気で繊細な女の子なのですが、彼女には不思議な力がありました。

彼女の一族の女性は、代々「姫神さま」の依り代というか、生まれ変わりというか、とにかくそういった存在なんです。そしてやはり代々山伏として、彼女を守るというか、彼女のしもべというか、そういった存在の相楽一族の親子、若々しく魅力的な父親と、泉水子の同級生で少々反抗的な息子の深水が、彼女と着かず離れずの関係にいるのです。

前作で自分の力を知った泉水子ですが、そう簡単に性格までは直りません。自分の力と向き合うために両親の進めで上京し、高尾山の近くにある鳳城学園に入学した泉水子が出会ったのは、彼女と似て不思議な力を持ったクラスメイトたちでした。自分を守るために自らの力を封じていたと思われる、メガネや三つ編みを外したときに彼女が見たものは・・。

「巫女、山伏、陰陽師、神官、歌舞伎、審神者、神楽舞い」などの日本古代史に連なる不思議な言葉が続々登場してきますが、荻原さんのいい所は、心理描写が細やかなこと。基本が丁寧に書かれているので、不思議の世界にも違和感なく入っていけるんですね。泉水子のキャラとのバランスを考えてのことでしょうか。才色兼備の真響や、彼女の弟で天然キャラの真夏、ハーフの留学生のジーン・仄香など、周囲には濃いキャラが集まっていくのも楽しい。

不思議な力を持った者たちが集う学園ものというと、世界的大ヒットとなった英国の魔法をテーマにした作品を思い浮かべますが、この本を「日本版」と呼ぶのはやめておきましょう。勧善懲悪的な思想に貫かれた「英国版」よりは奥が深いと思いますし、「中国版」なるものが盗作の嫌疑をかけられているようですから。

ただ、エンディングが完全に中途半端。前巻はお使いの姿を解くための舞で区切りよく終わったのに、ここで「続く」なんて、まるで「Star Wars」や「MATRIX」や「Pirates of Carribian」の第2作のようです。

2009/7