りぼんの読書ノート

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剣と紅(高殿円)

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2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」で有名になった、遠州井伊谷の女領主・井伊直虎を主人公とする小説です。本書の出版は2012年なので、こちらのほうがかなり前ですね。

今川家、武田家、徳川家の接点に近い遠州井伊谷を領地としてきた井伊家が、乱世に翻弄されてついには滅びる物語。歴史的背景や、井伊一族がたどった苦難も丁寧に描かれますが、本書を特徴づけるのは女領主・直虎の描き方でしょう。。彼女は、先を視る不思議な力を持っていたとされるのです。

井伊家を属将としていた今川家から勧められた縁談を断るために出家した姫が、還俗して女領主となったのは、戦や陰謀によって類縁の男たちが絶え果てたからでした。そして彼女は、本家筋の嫡男でまだ幼い虎松(後の井伊直正)を庇護し続けます。本書の直虎は、勇猛な女領主としてより、井伊谷の土着神の巫女としての側面が強いようですが、キャラとストーリーがそぐわないように思えてしまったのが残念です。

2019/5