りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ラジオ・ガガガ(原田ひ香)

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ラジオドラマのシナリオライターとして創作活動を始めた著者による、ラジオをテーマにした連作短編集です。ラジオというものは、パーソナルな性質を持っているようですね。ひとりで聴くことが多いからでしょうか。著者は、ジョン・カビラ伊集院光、オードリー、バナナマンが好きだとのことです。

「三匹の子豚たち」
3人の息子たちを育て上げて施設に入った老女がラジオを好んだのは、失った長女のことを思って、他の人を拒絶していたからなのでしょうか。

「アブラヤシのプランテーションで」
会社を辞めて飛び込んだ、シンガポールでのラーメン店長の仕事からも逃げ出そうとしている男が、ラジオ番組を聴いて涙を流します。しかし彼は、精一杯も尽くしていない自分には泣く資格もないことを自覚するのです。

リトルプリンセス二号」
ジオドラマ脚本懸賞で最優秀作品賞を受賞した、著者のデビュー作品です。不妊治療を受ける妻が創作する、不思議にセクシャルな植物に翻弄される夫婦の物語が、現実世界と交差していくようです。

「昔の相方」
昔コンビを組んでいた相方が売れた時、既に芸人生活から引退している元相方は、何を思うのでしょう。元相方としては、せめてネタにはして欲しくないだろうと思うのですが。

「We are シンセキ!」
リスナーたちが親戚のような気持ちになって投稿者の相談にのる番組は、もちろんダサくはありません。本当にダサイのは、本気にならないことのほうなのです。

「音にならないラジオ」
なかなか作品が採用されないラジオドラマのシナリオライターの悩みは、著者自身の体験がもとになっているようです。声優の予算も限られている中で、映像も長い説明もなしで物語を伝えなくてはならないラジオドラマは、制約が多いのですね。

2019/5