りぼんの読書ノート

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RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと(荻原規子)

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前巻で「数千年の時を翔る姫神の正体」や「迫り来る人類滅亡の未来」などの壮大なテーマが明かされましたので、本当にこれで最終巻となるのか信じられなかったのですが、こういうエンディングだったのですね。

学園の目的が明らかにされ、影の生徒会長・村上穂高が選んだ「世界遺産候補=学園トップ」は、「戦国学園祭」で能力を顕現させた泉水子だったのですが、陰陽師を代表する高柳は異議を唱えます。といっても前巻で「ポチ」になってしまった高柳ですから、ほとんど笑いの対象。

しかし自分の心の弱さが危機を招きかねないことを自覚する泉水子は、この選択に乗りません。果たしてIUCNの最終選択は「チームJAPAN」となるのですが、世界基準で見たら神道や山伏や陰陽師や地霊などの違いなど、僅かなことなのかもしれませんね。そしてひとまずは深行、真響、真夏、高柳らの「個の力」を強くしていくという選択は、まさにブラジルW杯出場を決めた後の本田の言葉の先取りです。(本書の出版は2012年11月)

ということで世界的陰謀の一端を示し、母・紫子の深い思いを明らかにした後は、姫神の再臨チャンスもなく、ラブコメ路線で締めくくり。要するに「未来の危機」は放置したまま、いつもながらゆったりとした泉水子の深化を見守る展開で一区切りつけたわけですが、このシリーズはこれで良いのでしょう。いずれは大激動の続編もあるのかもしれませんが、それは「外伝」的な断片で十分なのかもしれません。

2013/8