りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ライト(M・ジョン・ハリスン)

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スケールの大きさと、ガジェットの新鮮さで読ませてくれる本でした。久々にかなり本格的なSFを読んだ気分です。

3つの物語が交替で進行するのですが、最後になって意外な関係が明らかになってきます。1999年のロンドン、物理学者カーニーの、量子コンピュータ開発の物語。2400年のケファフチ宙域、女海賊セリアの、スペースオペラ的な戦闘の物語。2400年のケファフチ周辺、元宇宙船パイロット・エドの不思議な冒険の物語。

ケファフチ宙域というのは、外宇宙航法を獲得した人類がたどり着いた「宇宙の特異点」であり、古代宇宙文明の残骸から未知の科学技術を「発掘」できる場所のこと。それを作り上げた存在は永遠の謎となっているのです。

3人の主人公は「量子論の象徴?」ともいうべき「猫(シュレジンガーの猫ですね)繋がり」。カーニーが実験室で飼っている、白猫と黒猫。セリアと一体化している宇宙船の名前は「ホワイト・キャット号」。エドにとっては、曖昧になっている過去の思い出は黒猫のイメージと結びついています。

彼らはそれぞれ、ある未知の人物や存在のことを脅迫的に感じています。カーニーにとっては、シュランダーと呼ばれる、馬の頭蓋骨を思わせる存在。セリアにとっては、ドクター・ヘインズという名前しか思い出せない、過去の強迫観念。エドにとっては、サンドラ・チェンと呼ばれる、未来予知の強制者。

しかも彼らの行動は、だんだんと無茶苦茶になっていくのです。カーニーは、殺人衝動を抑え切れません。セリアは嫉妬から、重要な鍵を握っているパイロットのビリーを見殺しにしてします。エドは、彼を愛してくれたアンナという女性のもとを去っていきます。

こんな物語がどうやって収束していくのか。実は、カーニーが始まりであり、セリアとエドが到達点なのです。最後に明らかになるのは、それは何に対してなのか? セリアとエドの正体は何だったのか?

わけわかりませんよね~。ひとつだけヒントを出しておくと、彼らの強迫観念の源は、ケフェフチ文明の生き残りであり、人類にとっての造物主的存在だったのですが・・。

2008/10