りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ウは宇宙船のウ(レイ・ブラッドベリ)

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山本弘さんの「ビブリオバトルシリーズ」の君の知らない方程式で、SF好きの主人公・空が紹介していたので再読してみました。頑張って、全16編を紹介してみましょう。

「ウは宇宙船の略号さ」
フェンスにしがみついて宇宙船の発射を見つめる少年の夢が叶う時、彼は母親とも友人たちとも別れなくてはなりません。少年がフェンスの向こう側に一歩を踏み出すラストが美しい、抒情をたたえた作品です。

「初期の終わり」
人類最初の宇宙ステーションを建てるために飛び立つロケットに乗った息子。庭先から打ち上げを眺める老いた両親。父子の視点の入れ替わりが、時代の巡りを感じさせてくれます。

「霧笛」
灯台から鳴り響く霧笛に誘われて深海から現れる巨大な生物は、何百万年もの間、孤独に生きてきたのでしょうか。

「宇宙船」
宇宙旅行が可能になった時代でも、宇宙に行けるのは裕福な者だけ。毎日コツコツ働いてようやく1人分の旅費を積み立てた父親が選ぶのは、自分なのか、妻なのか、息子たちのひとりなのか。互いに優しい家族の物語です。

「宇宙船乗組員」
めったに家に帰ってこない宇宙船乗組員の父親。そんな夫を愛してしまった母親。父に憧れる少年が、母の苦悩を理解していく様子が切ない作品です。

「太陽の金色のりんご」
冷え切った地球を救うために、太陽のひとかけらを持ち帰る使命を帯びた宇宙船。これはSFというよりも神話ですね。

「雷のとどろくような声」
タイムトラベルで恐竜ハンティングが可能になった時代。しかし未来を変えてしまわないよう、細心の注意が必要なのです。テーマはバタフライ効果です。

「長雨」
金星で遭難した宇宙船乗組員が、太陽ドームなるレスキュー小屋を目指して歩くうちに、次第に狂気に支配されていきます。

「亡命した人々」
荒唐無稽な物語が禁じられた世界で、それでもフィクションを愛する人々が神々として生み出したのは、フィクションの巨匠たちだったのです。火星に亡命した者たちは、地球から押し寄せる科学社会に必至に抵抗するのですが・・。ニール・ゲイマンを思わせる作品です。

「この地には虎数匹おれり」
全ての望みを叶えてくれる惑星に背を向けてしまったら、恐ろしい運命が待っているのです。「惑星ソラリス」を思わせるプロットです。

「いちご色の窓」
火星への開拓移民が郷愁にさいなまれる物語。地球で長年親しんだ我が家や日用品を求めても、もちろん心は癒されませんが、「家族のために」という気持ちは嬉しいのです。

「竜」
火を吐いて暗闇を駆け抜けていく竜と対峙する2人の騎士。しかし「竜」の正体とは?

「おくりもの」
クリスマスの前日に火星に向かう宇宙船に乗り込んだ家族ですが、プレゼントの持ち込みは禁止されてしまいました。プレゼントをせがむ子供たちに父親が贈ったものは何だったのでしょう。

「霜と炎」
過酷な環境の惑星に不時着し、そこの生態に馴染んだ人類の平均寿命はわずか8日しかありません。その地に生まれ落ちたシムは、長い人生を求めて「伝説の宇宙船」へと向かうのですが・・。

タイム・マシン
時間とは、結局のところ記憶のことなのでしょうか?

「駆けまわる夏の足音」
新品のテニスシューズを欲しくてたまらない少年ですが、父親は買ってくれません。少年はあるアイデアを思いつくのですが・・。モノがあふれた現代では成立しない物語かもしれませんが、妙に郷愁を感じてしまいます。

1920年生まれの著者が1962年に発表した短編集はみずみずしく、序文に記された言葉は今でも輝きを失っていません。「星々はきみたちのものだ。きみたちが、それに到達する頭と、能力と、心とを持っているならば。」

2018/7再読