りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ラグランジュ・ミッション(ジェイムズ・L・キャンビアス)

イメージ 1

舞台は2030年の近未来。月面で採掘されて地球へと打ち出されるヘリウム3輸送船を、月と地球の重力が均衡して宇宙船がゼロ・スピードになるラグランジュ・ポイント付近で奪い合う物語。

宇宙船と積み荷の持ち主は、アメリカと各国が共同事業体。それを奪おうとするのが、宇宙海賊の通称キャプテン・ブラックを雇った謎の勢力。それを防ごうとするのは、海賊行為に対する強行策を咎められて米国空軍から左遷されても暴走をやめないエリザベス大尉。実はエリザベスは、海賊の正体と見定めた天才ハッカーのデビッドと、学生時代に一時つきあったことがあったのです。

この時代の宇宙海賊行為とは、無人の宇宙船の制御権をめぐるハッキングなのですね。とはいえ、輸送船に近づいた海賊船が、襲撃の直前に海賊信号を流すなどというのは、かなり古典的。しかも最後には、物理的な接触も重要になってくるのです。特に、キャプテン・ブラックが雇い主と袂を分かって四つ巴の争いとなり、謎の勢力の真の目的がヘリウム3の強奪などではないと判明してからは。

小型ボートに乗って独力で世界一周を始めた女子大生のアンが、物語の展開にどう絡んでくるのかは、最終盤のお楽しみ。宇宙を舞台にしたハッキングであっても、海賊の居所にふさわしいのはカリブ海ということなのでしょう。

2017/3