りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

最初の接触 伊藤典夫翻訳SF傑作選(高橋良平/編)

日本にSFを根付かせたのは、1959年に創刊された「SFマガジン」です。当時の名翻訳家・伊藤典夫が惚れこみ翻訳した宇宙SFの中から、SF評論の第一人者である高橋良平氏が7篇を厳選したアンソロジーです。

 

「最初の接触マレイ・ラインスター

地球の宇宙船が外宇宙で遭遇した漆黒の異星船は、敵なのでしょうか。ひとつ誤れば地球文明の滅亡を招きかねない最初の接触においては、相手が友好的であるとの仮定はあまりに危険です。しかしそれは、相手にとっても同じことなのでした。『三体』シリーズの「黒暗森林理論」を知った現代においては、まだまだ牧歌的な世界です。

「生存者」ジョン・ウインダム

危険な火星航路でトラブル発生。数カ月先にようやく訪れた救援隊が発見した生存者は、精神に錯乱を来した女性と、彼女が宇宙船内で産み落とした幼児だったのです。彼女は食料不足の中で、どのように生き延びてきたのでしょう。

 

「コモン・タイム」ジェイムズ・ブリッシュ

光速を超える宇宙船の中での時間が地球時間とは異なることは、相対性理論によって証明されています。しかし生身の人体と精神に対して、それはダメージを及ぼさないのでしょうか。仮死状態で帰還した宇宙飛行士は何を体験したのでしょう。

 

「キャプテンの娘」フィリップ・ホセ・ファーマー

他者との交流を拒む特殊な宗教共同体には、どのような秘密が隠されていたのでしょう。宇宙生物による寄生は『人形使いハインライン)』などの作品でもお馴染みですが、本書のケースはあまりにグロテスクです。

 

「宇宙病院」ジェイムズ・ホワイト

銀河系の果てにある宇宙病院には、今日もまた風変わりな宇宙人医師と宇宙人患者が訪れています。しぼんだスモモのような外見ながらテレパシー能力を有する医師は、巨大な恐竜のような生物に空中浮揚能力を与えようとしているのですが・・。

 

「楽園への切符」デーモン・ナイト

映画「スターゲイト」の前身のような作品です。古代の宇宙種族が設置した、行先不明のゲイトは訪問者をどこに導くのでしょう。

 

「救いの手」ポール・アンダースン

宇宙における超先進文明を築き上げた地球人は、貧しく荒廃した星に平和と繁栄をもたらす科学文明を伝導する博愛的な使命を帯びています。しかしそれを受け入れた星では何が起こったのでしょう。なぜある星の賢人は、善意の贈り物を拒んだのでしょう。地球を画一化した西欧文明への批判が込められている作品です。

 

2023/1