何れの側でも老いていく者と育っていく者との静かな交替劇が進みつつあるようですが、それは一様ではありません。公孫勝、呼延灼、戴宗らの言動が老成を感じさせたのに対し、南方で60万人を殺戮した童貫は、そこからまた何かを得て楊令との最後の戦いに備える心境に達したかのよう。梁山泊に復帰した呉用の「童貫を破らねば新しい国の姿は見えない」との予言的な言葉は、来たるべき何ものかを告げているのかもしれません。
本巻では、宋の諜報機関のNo.2である聞煥章に大きな動きが起こります。祝家村の戦い以来の長い間、妄想とも怨念ともつかない情念を抱いていた扈三娘との関係がある結末を迎えるのですが、「燕雲十六州の独立」という天才的な策謀が潰えた後でもあり、彼にとっては既に「余生」だったのかもしれません。
歴史は燕雲十六州の問題が金との新たな火種となることを教えてくれていますが、虚実が交錯しているこのシリーズの展開がどうなるのか、想像もつきません。梁山泊が占領している地域が、将来は金の一部となることと関係あるのでしょうか。北宋の滅亡(1127年)まで、あとたった3年程度しかないのですが・・。
2008/9