りぼんの読書ノート

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泥棒兵士のホームステイ(永田俊也)

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原潜が配備されようとしている横須賀で、米軍と市民の交流を深めようという企画に乗ったのは、海軍物資を横流しして金儲けをしようとたくらんでいる水兵クレンショーでした。

彼を受け入れた家庭のほうも、一見幸せそうな裕福な家族と見えたのですが、実はめちゃくちゃ。外資に勤めるエリート部長の父親は家庭を顧みず、妻をないがしろにして浮気三昧。家庭で評価されていないことに不満な妻は、ふと魔がさして、こっそり大麻を購入。優等生の高校生の姉は、モデルと偽った誘いに乗ってしまい、ハメ撮りされて恐喝されます。気の弱い中学生の弟は、不良グループからカツアゲされて困り果てている。さらに脳溢血で半身不随になった祖父は、生きる気力を失いかけているのです。

互いに相手に干渉せずに、ビジネスライクに「米軍と市民の親睦」演技に撤しようと提案したクレンショーですが、横流し物資の販売店をオープンする資金のたしにしようと、現金取引で問題解決に乗り出してあげるはめに。一方で、日本人女性との二股関係がばれそうになったり、彼を目の仇にしているエリート士官に不審を抱かれて捜査を開始されたり、あちこちでクレンショーの化けの皮がはがれそうになるのですが、彼の計画はどうなってしまうのでしょう。

男尊女卑の伝統芸能社会に挑戦する落語娘とは、だいぶ毛色の異なる作品でしたし、クレンショーが家族の絆を復活させる「実はいい人」みたいな展開もよくある話なのですが、ひとつひとつのエピソードが爽快に書けていますので楽しく読めました。

2008/9