りぼんの読書ノート

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楊令伝8(北方謙三)

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前巻から続く楊令率いる梁山泊軍と童貫率いる宋禁軍の総力戦は、いよいよ「最後の決戦」の形に向かっていきます。とはいえ、そこに至るまでの生死をかけた「削りあい」も過酷であり、それぞれの戦いにも大きなドラマがあるのです。

たとえば扈三娘。聞煥章の罠から抜け出して一軍の将に復帰した彼女は、年下の花飛麟と将来を誓い合うのですが、その直後に壮絶な戦死。彼女の死を戦いの中で乗り越えた花飛麟は、やはり父の死を乗り越えた呼延凌とともに、次世代を担う将として大きく成長を遂げていきます。

さらに長年梁山泊軍の主力を担ってきた張清や馬麟も戦死。一方でそれまで「二流の将」だった郭盛が、肝の据わった用兵を見せ始めます。古株となった陶宗旺が雷横の死を思い起こす場面や、馬麟の笛を張平が吹く場面などは、なかなか感傷的。

北方では、梁山泊の戦いに呼応して金が起ち、蕭珪材と唐昇らが燕雲十六州を攻めはじめます。とすると、この時すでに1125年。北宋の滅亡まで、あと1年ほどしかありません。やはり、梁山泊軍と宋禁軍の戦いは最終段階にきています。

それぞれの思いは、歴史の中でどのように実現するのか。あるいは踏み潰されてしまうのか。この後、何巻続くのかわかりませんが、ずっとクライマックスの連続のはずですね。

2009/3