りぼんの読書ノート

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岳飛伝 3(北方謙三)

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わずか8万の梁山泊軍が、名将へと変貌を遂げた兀朮(ウジュ)率いる金軍20万を退けることができたのは、紙一重の差だったようです。老いたりとはいえ、史進の存在は大きいのです。しかし、この戦いで楊令の仇として兀朮に迫った蘇琪を返り討ちにしたのは、楊令の遺児である胡土児でした。実の父親を知らない胡土児の今後の運命は?

かろうじて勝利した梁山泊は、金との講和に動き出します。全権を担うのは宣賛の息子、宣凱。いまだ領土型国家の域にすら達していない金を相手にして、楊令が掲げた、従来型国家の枠を超える自由市場構想を守りきることができるのでしょうか。しかしその時に、国家とはどう変貌しているものなのか。師・呉用に死が忍び寄る中で、宣凱は苦悶します。

兀朮との激戦の中で復讐心から解き放たれた秦容は、南に向かいメコン流域のさらに先に進み甘庶の開拓を目指します。水軍の協力を受け、軍を退いた兵たちが行動をともにしますが、戦闘とはまた異なる苦難が彼を待っています。王進と公淑の死後、子午山を降りた王清は、南宋水軍を強化中の韓世忠の造船所で出会った梁紅玉に一目惚れ。西域との新たな通商路を作り上げた王貴は張俊軍に襲われ、岳飛軍の養生所で世話になります。新しい世代の動きは既に、国家の枠を超えているようですが・・。

梁山泊と講和した金軍は、後顧の憂いを絶って30万の大軍で南宋を目指します。迎え撃つ岳飛軍は、防御のみならず失地回復を求めて北進の気合十分。しかし南宋の実権を握った秦檜の構想の中で、岳飛はどう位置づけられているのでしょう。宋末から始まる壮大な物語の終章が近づきつつあります。

2013/9