りぼんの読書ノート

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楊令伝10(北方謙三)

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前巻の梁山泊との戦いで童貫元帥を失った宋国は、既に国家の支柱を失っています。金軍の再度の攻撃によって開封は陥落し、徽宗・欽宗を北方に連れ去られてた宋はここに滅亡。金は、漢民族国家の直接統治は無理と判断して傀儡政権を立てますが、青連寺は江南に南宋の建国を進めます。

張俊、岳飛、劉光世ら、生き残った宋禁軍の将軍たちは、残兵を率いて拠点を築き、それぞれが独自の「軍閥」の様相を呈しており、未だ世の中は定まっていません。

そんな中で楊令率いる梁山泊はいたずらに領地を拡大することなく、独立を保って独自の国づくりを目指します。税を低く抑えて徴兵制を敷き、日本から西域までを繋ぐ交易の道を探るのですが、このような理想国家が、この時代に成立するのか?

一方で、世代交代も進んでいくようです。第一世代とも言うべき、公孫勝、李俊、史進らは後継を鍛えつつ「最後の奉公」に臨もうとしているようですが、戴宗の酔っ払いオヤジぶりはいただけません。最後の大物・秦容もついに子午山を出て、公孫勝に連れられ西夏に向かうのですが・・。

金太堅が死の床で「ついに偽印ではなく、自分の国の印章を彫ることができた」とつぶやく場面が印象的でした。著者は、脇役的存在にも配慮を忘れてはいませんね。

2009/10