失敗に終わる映画制作現場を舞台にした小説です。プロデューサーとしての名声を得るため、私財を投げ打って映画制作に全てを賭けた玉置優子が集めたメンバーは、現場のことを何も知らないのに自分が天才だと信じる新人監督に、かつて優子の恋人だった腕のいいカメラマン。人気絶頂の二枚目俳優に、芸能界での生き残りをかけた元アイドル。それぞれの思惑が交錯して現場は混乱し、映画制作は「必然的な失敗」へと向かっていくのですが・・。
光源とはスポットライトのこと。「誰もがスポットライトを浴びたがっている」というよりも、「誰もが自らの意思を放つ光源を持っている」との意味でしょうか。
映画制作現場の混乱を描いた小説としては、梁石日さんが自分の体験を基に書かれた『シネマ・シネマ・シネマ』がありますが、そっちはともかくも映画は完成してますもんね。結局のところ本書のメンバーの場合には、映画を製作する意欲が欠けているんですね。個人を優先させてしまっては、こういうプロジェクトは成立しないのでしょう。
そんな場合には、プロデューサーの強いイニシアティブが必要なのですが、本書の玉置優子は「個人的な事情」をいろいろ抱えて大変だったんです。それなら最後までずっと、彼女の視点で書いたほうが良かったのかも・・。
ところで、本書で一番印象的だったのは「後日談」なのです。プロジェクトに失敗してもそれぞれの人生は続くし、「それこそが現実だ」と言わんばかりのエピローグこそ、著者が書きたかったことのように思えたのです。
2009/10