りぼんの読書ノート

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イマジン?(有川ひろ)

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自衛隊3部作」から「図書館戦争シリーズ」というSF・ミリタリー系の小説で華々しくデビューし、多くの作品が映画・ドラマ化された著者ですが、本質的にはラブコメ作家。最近では「お仕事小説+ベタ甘ラブコメ」の作品が目立つようになっていますが、本書もそんな一冊です。舞台となるのは、テレビや映画の映像制作会社であり、タイトルはその会社名。

 

子どものころから映画制作に憧れていたものの、夢叶わずにバイトで生計を立てていた27歳の良井良助に、思わぬチャンスが飛び込んできました。それは正社員に登用されたばかりの先輩からの、映像制作現場でのバイトの誘い。使い走りレベルの仕事にすぎませんが、全力で取り組んでトラブルにも対応できたことが評価され、晴れて社員に採用されるのです。

 

監督や俳優たちと声を交わすだけでも目が眩む思いの良助ですが、もちろん楽しいことばかりではありません。ロケハン、設営、大道具に小道具、エキストラの確保と対応、日程管理や予算管理、その他何でも監督たちの要望に応えること。とりわけ無理難題を言いつける気難しい監督には手を焼きますが、最大の苦労は無能な上司の下についてしまうこと。上の顔色ばかりを窺って、下にはパワハラまがいのことを平然と押し付ける者は、どの世界にもいるんですね。いかに映像制作会社「イマジン」が風通しのいい会社であっても、しょせん下請けなのでその苦労からは逃れられません。

 

とはいえ、映像制作が「現実と物語を繋げる創造的な仕事」であり、作品に惚れ込んで一生懸命になれる仲間がいることも事実なのでしょう。先輩に恋してしまった良介は、仕事と実生活の両方で夢を持つこともできたようです。もっとも夢と現実のギャップが大きい仕事なのでしょうから、挫折することも可能性も大きそうですが・・。著者が現場で見聞したのであろう、『空飛ぶ広報室』や『植物図鑑』の撮影秘話のようなエピソードも登場します。

 

2021/5