2015年の本屋大賞3位となり、映画化もされた「ハケンアニメ!」のスピンオフ作品が6編収録されています。プロデューサーの有科香屋子も、新進アニメ監督の斎藤瞳も、新潟在住アニメーターの並澤和奈も、ついでに天才アニメ監督の王子千春も再登場。アニメ制作現場を舞台にした仕事人たちの夢と希望、情熱とプライド、愛と敬意、切磋琢磨が、臨場感たっぷりに描かれているのは、本編と同様です。
「九年前のクリスマス」
新進の天才監督の王子による「光のヨスガ」が放映されていた9年前。大失敗をした20代の香屋子も、高校生だった瞳と和奈も、「いつか」を思い描いていたのです。そして9年後、彼女たちがアニメを送り届ける側になるのです。
「声と音の冒険」
傲慢だった新人の頃の王子に、脇役の大切さを教えてくれたのは、ベテランの音響演出家・五條でした。やがて2人は深い信頼関係で結ばれていきます。そして何度もやり直しさせられた新米声優も。
「夜の底の太陽」
映画版でも用いられたエピソードだったと思います。アニメを禁じられていた少年が友人と仲直りし、不穏だった両親の関係も修復できたのは、アニメの楽しさを教えてくれた近所のお姉さんでした。拾いネコのザクロを飼ってくれたお姉さんは、斎藤瞳ですね。
「執事とかぐや姫」
フィギュア造形師となる夢を諦めて広報業務に徹している男は、トラブルでライバル会社を辞めた天才造形師の女性に惹かれていくのですが・・。
「ハケンじゃないアニメ」
時代の覇権を競うアニメに対し、「ドラエモン」や「サザエさん」のように時代を超えて愛され続ける作品は「リジェンドアニメ」と呼ばれるそうです。一見マンネリのような世界であっても、リジェンドであり続けることは途轍もないことなのです。老原作者とは満足に口も利けなかった中堅プロデューサーが責任を自覚したのは、立ち上げから30年間勤めあげた上司の定年退職がきっかけでした。彼は新しいオープニング動画作成を、斎藤瞳監督に依頼します。
「次の現場へ」
ひとつの仕事が終わってチームが解散しても、また次の仕事で新しいチームが組まれるのです。それぞれがまたひとつ成長して。
2023/1