りぼんの読書ノート

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砂の覇王 5~8(須賀しのぶ)

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ついに本人も知らなかったカリエの正体が明らかになります。彼女こそが亡国ギウタ王国最後の皇女カザリナであり、包囲されて炎上する王都ヨギナから彼女を連れて脱出した人物こそが、謎の美女ラクリゼだったというのです。しかしそれだけではありません。カリエは、古代に滅びたザカールの民が信奉する「流血女神ザカリアの娘」として選ばれており、過酷な運命に弄ばれた末に自我を女神に奪われることになるというのです。

しかし女神との対決はまだまだ先の話。当面はエティカヤ王国の第2王子バルアンの正妃として、兄のシャイアンと玉座を巡る骨肉の争いが彼女を待っています。劣勢のバルアンは海賊王トルハーンに襲われたことにして姿を隠しますが、トルハーンはかつて同僚であったルトヴィア海軍の天才指揮官ギアスに敗れ、カリエとともに囚われてしまいます。

バルアンは死亡したとされ、ルトヴィアの王座についたドミトリアスの賓客として遇されるカリエ。亡国の皇女かつ隣国の王子の未亡人として結婚話が巻き起こりますが、必ずしも政略結婚ばかりではありません。兄と慕うドミトリアスや、かつての弟分で辺境伯となったミュカからも迫られるのですが、カリエの心を決めさせたのは、バルアンの第1貴妃であったビアンの訪問でした・・。

「エティカヤ編」の最終巻を前にして、物語は佳境に入っていきます。バルアンとシャイアンの跡目争いが、そのままルトヴィアへの侵攻に結びつきかねない微妙な情勢の中で、カリエは自分の運命を切り開けるのでしょうか。そして「流血女神ザカリア」は彼女にどんな役割を担わせようとしているのでしょうか。

まだまだ先が長いシリーズであり、ひとつひとつの場面は少女コミックのようですが、勢いがありますね。何より「独特の世界観」を感じます。目が離せなくなってきました。

2013/9