りぼんの読書ノート

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暗き神の鎖(須賀しのぶ)

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兄弟対決を制したバルアンが王位について1年。エティカヤの最高神オルが眠る聖なる山、オラエン・ヤムにバルアンとともに登った王妃カリエは、女性の地位が低いエティカヤでは前代未聞のヨギナ総督の地位を与えられます。さらに王子アフレイムを出産して、幸福の頂点にいたはずなのですが、「女神の花嫁」としての運命が彼女を追いかけてきます。

父を殺してザカールで長老の地位についていた、ラクリゼの弟リウジールが、カリエを「人格を喪失した花嫁」として望んでいたのです。あろうことか、幼いアフレイムは生贄の役割。しかも女神ザカリエと恐るべき契約を交わしていたリウジールの力は圧倒的であり、ラクリゼですらあしらわれてしまうほど。

リウジールに奪い去られた幼い息子を追い、エティカヤでの地位もバルアンへの愛も捨て去って、秘境ザカールへと向かうカリエとラクリゼ。王妃の親衛隊長となっていたエディアルドは、サルベーンとトルハーンを伴って後を追いますが、カリエは既に捉えられ、ラクリゼは死亡との知らせが・・。そして運命の「ザカリエ大祭」の日が近づきます。

死者たちから受ける精神的責苦とリウジールから受ける肉体的苦痛は、カリエにとって絶え間ない生き地獄。ついにカリエは運命の前に屈してしまうのでしょうか。もちろんそんなことはありません。絶望から奇跡の復活を果たして人間の意志を信じ続けようとするカリエの姿は、「墓所の主」に対して「違う!命は闇にまたたく光だ!」と言い切ったナウシカに重なります。

しかし意思に反してリウジールの息子を宿してしまったカリエは、バルアンのもとへは戻れません。カリエの失踪はバルアンの心に闇をもたらし、恐るべき戦乱を招くことになってしまうのでしょうか。シリーズ最終作『喪の女王』はどのような展開となるのでしょうか。ここまできたら必読です。

2013/10