りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

楊令伝4(北方謙三)

イメージ 1

ついに宋禁軍の戦闘が南北でが開始されました。南では、童貫自らが兵を率いて方臘による江南の宗教蜂起の制圧へ。連環馬戦法で信徒軍を蹴散らす禁軍ですが、信徒が何十万人殺されても童貫ひとり倒せば勝ちという戦いの形の中で、戦いの行方には暗雲がたちこめてきます。童貫は、江南に釘付けになってしまうのでしょうか。それとも・・。方臘の参謀として蜂起に加わる呉用は、戦いの行方を見据えようと方臘軍にとどまります。

北では、金との「海上の盟」によって、宋に譲られることになっている遼の燕金に、趙安軍が攻め入りますが、遼の軍閥であった耶律大石らが防御する燕金は、なかなか攻略できません。燕雲十六州を新国家として独立させようとの動きもあり、その背景には青蓮寺の聞煥章がいる気配もあります。

そんな中、楊令を新しい盟主として再び「替天行道」の旗を挙げた梁山泊は、史進呼延灼、李俊、張清、燕青らに加えて、花飛麟、穆凌らの若手も台頭しつつあって、かつての勢いを取り戻しつつあるようです。

史実と虚構が入り混じる展開の中、後に宋末期の大将軍となる岳飛は童貫に見出されて南方に従軍中なのですが、この巻ではチラッと若き秦檜も登場します。後に南宋で対金主戦派の岳飛のライバルとなる和平派の秦檜は、時に「売国奴」とも酷評されることもある男です。この物語が南宋と金の関係が安定して平和な時代が到来するまで続くのであるなら、やがては楊令らの同盟者となる存在なのかもしれません。次巻以降の展開も楽しみなシリーズです。

2008/4