りぼんの読書ノート

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楊令伝7(北方謙三)

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前巻では互いに傷を癒しながら、来るべき決戦に備えていた宋禁軍と梁山泊軍の間で、ついに全面対決の火蓋が切られます。これが最終決戦となるのでしょう。「禁軍の岳飛vs梁山泊の花飛麟」という若い才能が、煌きの片鱗を見せ合ったのもつかの間、「趙安vs呼延灼」という古参将軍ががっぷり四つに組んだ、超ど級の戦闘が開始されます。

一方、金によって旧遼から燕雲十六州を回復した宋は、金に約束した歳幣を十分に送らずに違約を咎められており、金軍の南下にも気を尖らせる必要があって複雑な戦いを強いられているのですが、禁軍総帥の童貫は「最後の戦い」を楽しむかのように変幻自在の動きを見せてくれます。緒戦を制するのはどちらなのか・・。

ところで『水滸伝』の時代から長い間、戦い続けている両者の将たちは、戦いの中でこそ得ることが可能で会った何ものかを、人それぞれに掴みつつあるようです。それは父から子に伝わる思いであったり、生死を超越した人生観であったり、新しい国の形であったりするのですが、とりわけ、宋内部の者たちの思いが複雑になってきたようです。

宋の諜報機関としての役割を担っていた青蓮寺を率いる李富は、王安石以来の伝統であった「体制内改革」の立場を変え、宋と言う国をもはや見限っているような言動を見せ始めます。彼なりの「新たな国づくり」の展望が見えてきているのでしょうか。

思えば、梁山泊を革命軍として描くと言う新機軸で始まったこのシリーズも、金の勃興と遼の滅亡、さらには遠くない将来に訪れる宋の崩壊という史実と連動してきて、かなり複雑になってきました。比較的、純粋さを保ち続けている梁山泊側と対照的に、様々な動きが現れるのも当然のことなのでしょう。次巻からは、クライマックス・シーンの連続になるはず!

2009/1