りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

本を読む女(林真理子)

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読み始めてから気づきました。これ、以前にNHKで、「夢見る葡萄」とのタイトルでドラマ化されていましたね。主人公の万亀(まき)を、菊川怜さんが好演していました。

林真理子さんが、自身の母親をモデルにして描いた小説。山梨の老舗和菓子屋に生まれた、ただ本を読むのが好きなだけの平凡な女の子が、父親の急死や、古い因習や、戦争という大きな時代の流れに巻き込まれていきます。進学、就職、結婚という人生の岐路において、何度も現実の壁に押しつぶされそうになりながらも、読書を心の支えにして、故郷で小さな本屋を開くまでの半生記。

女子大にあこがれながらも家政科を勧められ、女性にふさわしい職業ということで福島で教職につき、実家に戻って祖母の看病、進められるままに結婚して大陸に渡り、生活力のない夫に代わって家計を支えながら出産。やがて敗戦を迎えるのですが、闇市で食料品の傍らで売った実家に残っていた本を、むさぼるように読んでくれた読者の存在が、彼女に本屋開店を決意させます。

文学少女の夢が次々と破れていく過程が描かれているものの、不思議に明るい。「赤い鳥」から「斜陽」まで、人生の節目を本のタイトルになぞらえた章立ても効果的。

何より、林さんの、母親に対する愛情を感じる本でした。この小説で描かれた時代の後になりますが、本の好きな母親のもとで育った林さんが、やはり本好きの少女として育って、やがて作家になったとの事実には、巡りあわせを感じます。読書好きの女性には、ぴったりくる一冊だと思います。

2009/1