りぼんの読書ノート

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西のはての年代記Ⅰ ギフト(ル=グウィン)

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ゲド戦記』の作者であるル・グウィンさんが久々に書き著した新シリーズの第一作。「西のはての年代記」と呼ばれるシリーズは、『ギフト』、『ボイス』、『パワー』の三部作となることは既に発表されており、現在のところ第2巻までが刊行されています。全部出揃ってから読むつもりだったのですが、待ちきれずに読み始めてしまいました。

物語の主人公は、北の高地に住むオレックという少年と、グライという少女。北の高地はいくつかの領地に別れてそれぞれブランターと呼ばれる領主に支配されていますが、繁栄している南の低地と較べるとどこも貧しい土地。でも、彼らには不思議な力があったのです。

「ギフト」と呼ばれる不思議な力は、天からの賜物として代々同性の子どもに引き継がれるのですが、どれも物騒なものばかり。人の身体を歪める能力とか、意思を奪う能力とか、病気にする能力とか、見えないナイフで切り刻む能力とか・・。唯一の例外は、グライが引き継いでいる動物や鳥と心を通わす能力なのですが、これだって狩りの時に動物を殺すために呼び寄せることが大半。一方で、オレックの家系の能力は、一目で人を殺すことができるという一番過激なもの。

オレックの場合は、その能力が自分で制御できない「暴れギフト」として現れてしまいました。ギフトが暴走しないように常時目隠しをして暮らす中で、隣国の残酷な領主に母を殺されてしまい、自分には何のギフトも与えられていなかったのかと悩み始めたオレックは、どう生きていくのか。そもそも「ギフト」とは何なのか。このテーマが3巻かけて明らかにされていくのでしょう。

ある地域に住む人々が遺伝的に特殊な能力を持っているというあたりは、恩田さんの『常野物語』と共通する部分がありますが、主題は大きく違っていそうです。

2008/8