りぼんの読書ノート

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夜の底は柔らかな幻(恩田陸)

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国家権力も及ばない「途鎖国」は、特殊能力を持つ「在色者」たちを輩出する地域でした。年に一度の「闇月」の期間、無法地帯となる「ヤマ」で壮絶なバトルが繰り広げられます。

ヤマの長「ソク」になったという凶悪テロリストの神山を追って入山したのは、かつて神山と結婚していた女性刑事の実邦。彼女に恨みを抱く入国管理官の葛城。神山から「ソク」の座を奪おうとする殺人鬼の青山。実はこの4人は同級生だったのです。彼らを教えた屋島風塵も事態の深刻さを察して、長年自らの意思で閉じこもっていた刑務所を出て入山します。

さらに別の目的で神山を追う、アッパー手術で能力を上げた黒塚や、神山の息子らしき超絶能力を持つ少年らが入り混じってたどり着いた先で、想像を絶する「途鎖国」の秘密が姿を現すのでした・・。

謎めいた雰囲気は次第に高まり、密度の高いバトルが展開されるのですが、恩田さんの作品に明快な結末を期待してはいけませんね。「地獄の黙示録」をイメージしたという恩田さんにとっては、「狂気に満ちた雰囲気」を描くだけで十分だったのかもしれません。

神山は最後まで姿を見せませんし、秘められていた実邦の巨大な力も現れることなく、結局マジで闘ったのは「葛城vs黒塚」だけというのも期待はずれ。まあ、そこに至る前に屋島先生が全てを収めてしまったというもとなのでしょうけどね。水晶に閉じ込められていた「ホトケ」の意味については、もはや想像するしかないのですが、もう少しヒントが欲しいものです。

ところで、同じ超応力者一団を描いた常野物語シリーズはどうなっているのでしょうか。まさか続編の構想くらいはあるんでしょうね・・。

2013/5