りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

滝山コミューン1974(原武史)

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この本は、こう紹介されています。この歌に違和感を覚えた人も、懐かしく思う人も、ぜひお読みくださいと。

ひとりのちいさな手 なにもできないけど
それでも みんなの手と手が あつまれば
何かできる きっとできる

70年安保を最後にして「政治の季節」は終わったと言われています。しかしその後、学生運動を通じて社会主義的な理想に触れた「少壮気鋭の教師たち」が、学校教育に集団主義的な思想を持ち込んだ時代がありました。当時小学生だった著者が、当時の記憶に加えて、日教組や全生連の資料を重ね合わせ、「今ならわかること」を解析・回顧した本です。

旧ソ連の教育理論に基づく「学級集団作り」が、ソ連のアパートに似た雰囲気を持つ西武滝山団地の小学校に持ち込まれ、著者の言うところの「コミューン」が形成されていく過程がリアルに綴られます。学級委員選挙、運動会、修学旅行、夏合宿という、普通の学校行事が、「みんなのため」との美名のもとに、異質なものを排除していくことに使われていくんですね。協調心と団結力を養うための「班活動」が、ダメな班や、ダメな個人を作り上げて自己批判を迫るというのは、文化大革命すら思わせます。集団主義が、小学生の心を押しつぶしてゆく・・。

平等より自由、集団より個人を大切にする風潮が一般的になったのは、いつからなのでしょう。でも学校では今でも、一般社会と比較すると「平等と集団」がより重視されているように思えます。「滝山モデル」自体は、団地の衰退とともに終わりを迎えるのですが。

ただ、作者はこうも言うのです。女性や児童を主体とした「民主主義」を、より良い形で実現することは
できなかったのだろうかと。「平等と集団」の去った後に残されたものは、陰湿ないじめ、荒れる学校、受験至上主義だけだったのですから・・。

2007/9