りぼんの読書ノート

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動物農場(ジョージ・オーウェル)

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1944年にオーウェルが著した本書は、全体主義スターリン主義を痛烈に批判した寓話的な作品です。当時まだスターリンは現役どころか、第二次世界大戦に勝利した英雄としての評価も高く、オーウェルは本書の出版社を見つけるのに苦労したとのこと。何しろ公式なスターリン批判は、彼の死後1956年のことなのですから。

動物を搾取してきた農場主ジョーンズを追い出した動物たちは、ついに「すべての動物は平等である」との理想を実現したかに見えました。しかし、大統領に選ばれた知力に優れたブタが、少しずつ特権を拡大していくのです。やがて政敵のブタを追い出して、全ての権力を握ったブタはやりたい放題。特権享受、個人崇拝、政敵粛清、歴史改変、国民弾圧を行い、ついには理想すら書き改めるに至ります。「すべての動物は平等である。だが一部の動物は他よりもっと平等である」と。理想を信じて身体を害するまでに働いた馬の末路も悲惨なものでした。

著者は「大衆が目を開いていないといけない」と述べています。このような結末を避けるにはどうすべきだったのか。動物たちはどの段階で何をすべきだったのか。本書は単にスターリンを批判するのみならず、どの国でもどの体制下でも現われ得る独裁についての寓話と読むべきなのでしょう。現在でも示唆に富む作品です。

2019/4