りぼんの読書ノート

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ジェーン・エア(シャーロット・ブロンテ)

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ブロンテ3姉妹の長女、シャーロットの代表作を久しぶりに読み返しました。
この作品が「奇跡的」なのは、ヨークシャーの田舎牧師の家に生まれながらヴィクトリア期を代表する小説家として名を遺した著者の生涯が「奇跡的」であるのみならず、当時の文学にとって画期的なテーマを数多く含んでいたことにあります。

主人公のジェーンは美しくもなく、孤児である運命に不満を抱き続け、男女平等意識を持ち、財産や身分にとらわれずに自由恋愛を貫き、最後には女性から愛の告白までしてしまうのですから。

ジェーンの少女時代を描いた前半は、自然主義的な手法で描かれます。孤児のジェーンは、叔父の遺言で彼女を引き取った叔母のリード夫人とその子どもたちから虐待されて育ちます。教育施設ローウッドに送られ、優しいテンプル先生や後に親友となるヘレン・バーンズと出会うものの、施設の環境・食物・水の悪さからローウッドにはチフスが蔓延し、ヘレンは結核で死亡。このあたりは自身の体験ですね。シャーロットも寄宿学校で姉を肺炎で亡くしているのですから。ヘレンのモデルは姉であり、テンプル先生のモデルとなった教師も実在したそうです。

家庭教師の口を求めてソーンフィールド邸に住み込むようになってからの後半は、ロマン主義的な怒涛の展開ですね。当主ロチェスター氏に見初められて結婚を申し込まれたものの、結婚式の際に発覚した狂人の妻の存在に衝撃を受けたジェーンは家を飛び出します。路頭に迷い、行き倒れになりかけたところを牧師セント・ジョンと彼の妹、ダイアナとメアリーに助けられて身を寄せるのですが、彼らはなんとジェーンの父方の従兄姉だということが後に判明します。

インドに布教に出るセント・ジョンからの求婚を受けようとしたジェーンは、ロチェスターが自分を呼ぶ声を聞いたように思えて、ソーンフィールドを再訪。そこでジェーンが知ったのは、ロチェスター家を襲った災難だったのですが・・。

時代の変わり目において、自然主義ロマン主義を融合させた作品としても、本書は「奇跡的」なのです。

2012/8再読