りぼんの読書ノート

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俳風三麗花(三田完)

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大学教授を父に持ち、女学校を卒業して花嫁修行中のちゑ。女子医学専学生として女医を目指している、モダンガール風の壽子。屋形船の句会で同席して句会メンバーとなった、浅草芸者の松太郎。高浜虚子門下の暮愁先生が主催する句会に集う、妙齢の女性たちの爽やかな友情と、俳句にこめた想いが、昭和7年という時代の中でしっとりと綴られていきます。

それぞれに肉親を失ったばかりの境遇であったことが、生い立ちも性格も異なる3人の友情を深めていく前半と、互いに身の振り方を考えていくようになる後半までが、簡潔で余韻を残すような文章で綴られるこの小説は、まるで一編の句のように美しい。

でも、大東京市の誕生、白木屋の火災、皇太子誕生、5・15事件、国連脱退と物語の背景で流れていく時代は、彼女たちを流れの外に置いたままではいてくれません。ちょっぴり物悲しい気分にさせるエンディングは、これからの彼女らの人生に影を落とすことになるのでしょうか。気になるところです。

31文字で、季節を読み込み、自然を写生し、詠み手の心象までを写しとる俳句を作ると言うことは、言葉と格闘することのようです。頭に浮かんだ句を、より良く仕上げていくために推敲を重ねていく様子からは 、一文字異なるだけで全く違った趣になる日本語の美しさをしみじみと味わうことができました。

2007/9