りぼんの読書ノート

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ゲド戦記4 帰還(ル=グィン)

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「3部作」と言われていたシリーズの、16年後に書かれた第4部。16年のブランクは、シリーズの思想を、根本から変えてしまいました。

作者は、3巻までの「魔法の世界」を壊そうとしているかのようです。問われているのは「世界にとって魔法は善きことなのか」という、ファンタジー世界の根本に関わる命題なのです。

第2巻の主人公だった「腕輪のテナー」が再登場・・・とはいえ、当時14歳の少女も、25年たてば39歳。ゲドの故郷の島で、農夫の妻として幸福な半生を送ったテナーが、愛していた夫を失い子供たちも一人立ちした所でゲドと再会。

第3巻の「生と死の境界」を塞ぐ戦いで魔法の力を全て失ったゲドは、大賢人の座から下り、故郷の島で隠棲しながら、かつての教え子で今は王座に就いたアランによる、政治の刷新を見守っているのですが、新国王の誕生を喜ばない領主から、狙われてしまいます。テナーは、ゲドを守ろうとするのですが・・。

作者が第4巻を書いた時には第5巻の構想はなかったそうですが、この本の役割は、前半3部作から第5巻への橋渡しですね。実際に書かれたのは、さらに10年後なのですが・・。

第4巻の危機を乗り越えるに際しては、テナーが大火傷から救い出して娘として育てている少女テルー(テハナー)が、鍵を握っているのですが、彼女は次に、もっともっと大きな役割を果たすことになってきます。第4巻と第5巻は、セットで考えたほうが良さそうです。

テナーは、ついにゲドと結ばれるのかって? そんな野暮なことは、聞かないでください。


(追記)
映画の「ゲド戦記」を見た友人が、テナーのことを「魔女の宅急便」の「おソノさん」みたいだと言ってました。違うよ~っ!

2006/8