りぼんの読書ノート

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煙と骨の魔法少女(レイニ・テイラー)

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プラハで芸術を学び、美しく奇怪な生き物であるキメラの絵を描く、青い髪の少女カルー。しかし、誰もが想像の産物だと思うキメラたちは、実在していたのです。彼女が学校の帰りに立ち寄るのは魔法の通路の向こうにある「願い事屋」であり、人と獣が混じった姿をしている店主ブリムストーンの依頼で、世界中の売人から歯や牙を集めてくるのが、カルーの普通の生活でした。

しかしそんな平凡な日常は、カレル橋の上に「天使」が現れた日を境に一変してしまいます。金色の燃える瞳を持つ燭天使アキヴァは、キメラを敵視する反面で、なぜかカルーに引き寄せられているようなのです。

3部作の第1巻である本書は、カルーが自分の出自と、本来自分が属していた世界の存在に気づくまでの物語。キメラとは、天使とは何者なのか。なぜカルーは両親の存在を知らされていないのか。なぜブリムストーンは彼女の養父の役割を担っているのか。そしてアキヴァとカルーの間には、どのような因縁があったのか。全てを知った時、カルーは絶望の底に叩き込まれてしまうのですが・・。

カルーという名前は、キメラ語で「希望」という意味だそうです。彼女には、どんな希望が託されているのか。続巻の展開も楽しみな、ハイ・ファンタジーです。カルーの親友で、普通の人間ながら異界の存在を疑わないムードメイカーのズザナが、いい味を出しています。

2016/1