りぼんの読書ノート

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十二国記 9.白銀の墟 玄の月(3)小野不由美

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王宮に軟禁状態で置かれている泰麒のもとに、耶利という不思議な少女が派遣されてきます。彼女は後に、この世界における流浪の民である黄朱であることが判明します。蓬山を囲む妖魔の棲家である黄海を故郷とし、王に支配されず天帝の意もすり抜ける妖魔の民と呼ばれる黄朱が、なぜ戴国にいるのでしょう。そして彼女を送り込んできた人物とは誰なのでしょうか。王宮内に蠢いていた妖魔を無力化した耶利の実力は確かなものですが、そもそも王宮に妖魔を招き入れた者は誰なのでしょう。

 

ここに至って阿選が反逆を企んだ真意が明らかになります。かつては良きライバルでありながら王位へと駆け上った驍宗に対する嫉妬ではないというのですが、かなり複雑でねじ曲がった理由にしか思えません。乱暴に纏めてしまうなら、ダークサイドに墜ちたとでも理解しておけば良いのかもしれません。常に民のことを思っていた驍宗と阿選の間には、やはり大きな隔たりが存在するのです。さらには、国も王も麒麟も尊ばず天意にのみ興味を持っているかのようか琅燦の存在も、微妙に絡み合ってたいたようです。

 

北部の山で驍宗を探し続ける李斎は、対象を狭めつつあります。かつては名だたる玉の産地であり廃坑跡が縦横に走る函養山で、妖魔が起こした落盤に閉じ込められていたのです。それによって阿選の手を免れることはできたものの、自力での脱出もできなくなっていたわけです。しかし深山の奥の地下の坑道跡で、彼はどのようにして生き延びていたのでしょう。驍宗に禅譲を強いるために、阿選の手の者も動き出しました。李斎の探索は間に合うのでしょうか。続く最終巻は、全編がクライマックスです。

 

2021/5