りぼんの読書ノート

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カッコウの呼び声(ロバート・ガルブレイス)

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馴染みのない著者名ですが、あの「J.K.ローリング」のペンネームだそうです。著者は匿名希望のようだったようですが、それが明かされてしまったのは「出版界の事情」なのでしょう。本書は、人間関係や伏線の説明にじっくりと時間をかけるという、あまり現代的ではないスタイルですので、彼女のネームバリューなしではセールスが難しかったのかもしれません。

物語は、黒人のスーパーモデルの転落死から始まります。警察も世間も事件を自殺と片づけたものの、疑いを抱いた彼女の兄が、戦傷で軍を退役した私立探偵コーモラン・ストライクに調査を依頼。家賃も滞らせ、彼女からも振られた冴えない探偵は、ほとんど手違いで派遣されてきた秘書のロビン・エラコットの力を借りて、モデルの世界を調べ始めます。

スーパーモデルの華やかな人間関係の背景にあった複雑な家族関係を2人が暴き出していく様子は、まるで松本清張さんの「社会派推理小説」のようです。そういえば、「わかってみれば平凡な動機」と「意外な犯人の背後にあった過去の因縁」という組み合わせも、松本清張作品と共通しています。

若くて機転が利き、常に転職を考えていながら探偵の仕事に惹かれていくロビンは十分に魅力的なので、対照的なキャラのコーモランが冴えないのも、仕方ないのでしょう。ただし主人公は、もう少し魅力を感じさせてくれたほうが読みやすいのですが・・。

2016/1