りぼんの読書ノート

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ゲド戦記①②③ (ル=グィン)再読

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著者が激怒したというジブリ映画をTVで見て、読み返してみたくなりました。まずは、初期3部作である第1巻から第3巻まで。

影との戦い
魔法の才能にあふれるゲド少年が自惚れから禁じられた術を使い、死者の霊とともに「影」をも呼び出してしまいます。「影」に脅かされ続けたゲドは、師の助言により、「影」と対峙する道を選ぶのですが、「影」の正体はゲド自身だったのです。

こわれた腕環
名前を奪われ、地下の神殿の闇の中で育てられた巫女テナーのもとに現われたのは、世界の均衡を回復するために2つに割られた「エレス・アクベの腕輪」を回収し、修復しようとする魔法使いゲドでした。他者への信頼を通じて自分自身を取り戻すに到る少女の物語です。

さいはての島へ
再び世界の均衡が崩れて魔法使いも龍も力を失う中、大賢人となっていたゲドは、若き王子アレンとともに世界の果てを訪れます。そこで2人が見出したものは、崩壊した、生者の国と死者の国を隔てる境界だったのです。

あらためて思いますが「戦記」というタイトルは適切ではありませんね。ここにあるのは一貫して、自己の葛藤を通じて成長する少年と少女の物語であり、死を許容することによって生を輝かせようとする死生観なのですから。

ジブリ映画は、第3巻のストーリーを中心にしながら、「影」に脅かされる少年をアレンとし、さらに第4巻のテナーとテルーまで登場させるというあまりにも盛り沢山なものでしたが、何を言いたいのかわからない作品になってしまったようです。何よりこれでは、ゲドが何者なのか理解できません。

2011/9