りぼんの読書ノート

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ゲド戦記3 さいはての島へ(ル=グィン)

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ジブリによる映画化は、この巻をメインとしたストーリーだそうです。「ネタばれ」を含むので、映画を見ようとしている人は読まないでください!

テナーとともに「平和をもたらす腕輪」を持ち帰ってから25年後、壮年期を迎えたゲドは「大賢人」として魔法の館の長になっています。

平和を謳歌していたアースシー世界でしたが、辺境から変報が届きます。どうやら辺境各地で魔法の力が失われて秩序が損なわれつつあり、異変の起きている地域がじわじわと広がっているようなのです。若き王子アランを連れて、探索の旅に出たゲドが見つけ出したのは、「生と死の境界」があいまいになりつつある・・ということでした。

全編を通じて、暗鬱な雰囲気に包まれています。「永遠の生=永遠の死」というメタファーは、さすがに重い。ナウシカが、「永遠の生」を退けて、「命は闇に瞬く光だ!」と言い放つクライマックスとも共通してますね。

寡黙なゲドに読者は、アランと同様のとまどいを感じるでしょう。でも作者は、読者の「とまどい」ですら計算しているようです。暗闇の中で手探りして、得体の知れない何かを知覚していくような感覚が、このテーマを理解していくにはふさわしい。

このシリーズ、「戦記」というタイトルで損をしているように思います。

2006/8