りぼんの読書ノート

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ゲド戦記2 こわれた腕輪(ル=グィン)

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魔法使いゲドの生涯とアースシー世界の光と闇を描く物語の第2巻。

第1巻で自らの影におびえる少年だったゲドは、青年になっています。「平和をもたらす腕輪」の片割れを求め、異教の島に乗り込むのですが、そこで暗黒の地下迷宮を支配する大巫女アルハに囚われてしまう。

大巫女アルハ自身、幼い頃に家族から引き裂かれ、「闇」の守り手となることを運命づけられ、「自由」など考えたこともなかった少女。ゲドと出会うことによってアルハは、テナーという本名を取り戻し、「闇」に打ち勝って、墓所から逃れることを決意するのですが、「自由」を選択することは重荷を背負うことでもあると気づきます。

「自由になった後、今までの自分の経験は、何の役にもたたない」と感じて、与えられた「自由」を押し付けられたものとして捉えてしまうテナーの逡巡は、理解できますね。

第1巻が男の子の成長物語なら、第2巻は女の子の成長物語。ゲドの成長のためには、世界の島々を巡る冒険が必要だったのですが、テナーの気持ちは、彼女の心を模したかのような迷宮で揺れ動きます。やっぱり「女の子のイニシエーションは内に向かう」のでしょうか。

2006/8