りぼんの読書ノート

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ゲド戦記6 外伝(ル=グィン)

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「外伝」というから、ゲドや仲間たちが活躍したエピソードの数々が収められていると思ったら、そういう話はひとつだけ。(『湿原』)。作者が作り上げたアースシーの世界を、より理解するための1冊となっています。5つの短編と巻末の「アースシー解説」から成っていますが、本編の内容に直接関係してくるのは『カワウソ』と『トンボ』ですね。

『カワウソ』では、ローク学院が、権力者の圧制に抵抗する拠点として創設された経緯が語られるとともに、ラスト近くでは、学院内部でも魔女排斥の動きが起きつつあったことが示唆されています。

ゲドの時代には、魔法は完全に男性のものになっていました。女性たちは「生む性」として、魔法より古い「太古の魔術」を伝承で伝え続けてきたのですが、それが男性たちから恐れられ、世界が安定期を迎えると、統一戦線から外されてしまったようです。世界平和の維持や、真実を追究するような高度な魔法は男性に独占され、魔女には、低級なまじないや産婆術しか許されなくなっていくのです。

『トンボ』は第4巻と第5巻の直接的な橋渡しをするエピソードですが、ローク学院が女性であるアイリアンの受け入れを巡って、2つの勢力に分裂する様子と、意外な結末が描かれます。

本編の第5巻で、火傷の少女テナハーとともに、重要な役割を果たしたアイリアンは、すでに外伝で登場していたんですね。実際の時系列でも、外伝は、第4巻と第5巻の間に書かれたとのこと。シリーズで読み通そうという人には、5巻の前に読むことをお勧めします。

2006/8