りぼんの読書ノート

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世界の歴史6「近代ヨーロッパ文明の成立」(J.M.ロバーツ)

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「世界史に詳しくない連れ合いと一緒に世界史を学び直そう」との趣旨で読み始めたこのシリーズも、半ばを超えて、全10巻中の6巻め。でも肝心の連れ合いは、第2巻で既に挫折しちゃってます(笑)。

前巻までに「大航海時代」到来前の各地域の歴史は概括されています。それは地域ごとに差異化を進めていった時代とも言えるのですが、ついに力を蓄えたヨーロッパが世界に襲い掛かることによって、その後の世界の歴史は暴力的に統一されていくことになります。

とはいえ、コロンブスやマゼランの航海が一気に世界を変えてしまう訳ではありません。比較的早い次期に、南米のアステカ、マヤを征服したスペインはむしろ例外であり、大半の事例では初めは通商による利益追求が目的であり、「植民地化」には200年~300年という長い年月を必要としたのです。

むしろ「大航海の時代」の初期の影響は、ヨーロッパで起きました。16~18世紀のヨーロッパは、中南米から大量の銀を収奪して「大国」となったスペインにかき回されてしまった感があります。スペインを統一したカトリック両王が、ハプスブルグ家との婚姻政策を進めた結果、孫にあたるカール5世は、神聖ローマ帝国とスペインにまたがる巨大な領地を支配することになりますが、イタリアを巡ってフランスのヴァロア家と闘ったのが、ケチのつけはじめ。ルネッサンス国家を荒廃させることになったイタリアにとっては、いい迷惑だったのですが・・。

フランスとの争いは、80年に渡ったオランダ独立戦争にも引き継がれます。ウェストファリアの和議(1648)では、スペインの退潮は明らかになり、さらに後継者のいなかったカルロス2世の死後に起きたスペイン継承戦争ユトレヒト条約(1714)でとどめをさされるに至ります。ちなみにユトレヒト条約以降、西洋の国境線はほとんど変わっていません。

近世ヨーロッパが力を蓄えることができた理由に触れていませんでした。10世紀以降の農業と商業の発達に支えられた人口増加に加えて、社会矛盾の現れであった宗教革命と対抗宗教革命を経験したことが、信仰と利益追求を一体化して意識を世界に向かわせたことも一因でしょう。

世界的には、スペインとポルトガル、さらにはオランダが勃興しますが、欧州内での圧力におされて彼らの勝利は一時的なものに終わります。欧州ではフランス王政が全盛期を迎えますが、この時代の終わりには、大陸内の争いから身を引いていたイギリスが「大英帝国」へと変貌して世界史の主役の座に就くことになるのでした。中東欧ではハプスブルグの衰退がはじまり、ドイツのホーエンツォレルンとロシアのロマノフが力を蓄えた中で、いよいよ次巻ではフランス革命が始まろうとしています。

2007/4